私は大学受験の時、数学の問題集を丸暗記して受験に臨みました。
恥ずかしい話ですが、高校生時代の私は数学が全くできませんでした。本当に「全く」です。問題集を解こうにも、何を問われているのかがまず理解できず、解説を読んでもチンプンカンプンでした。今考えると、学校の授業からは完全に置いていかれ、塾なり家庭教師なりに、高1の基礎から教わらないといけないレベルだったと思います。
しかしすでに受験まで残り半年という段階で、私のとった行動は、数ⅠA、ⅡB、ⅢCの問題集3冊を丸暗記するというものでした。何を考えていたのだ、当時の自分は(^_^;)
今考えると滅茶苦茶ですが、同じ問題集の解説を何度も写経のように書き写し、ブツブツと音読し、分からないなりに理解しようと努めました。今考えると、教科書の例題からしっかり解き直していけば、まだましだったとは思います。しかし当時の自分は、その方法しか思いつきませんでした。問題数は3冊で600題弱だったと思います。これは数学の勉強をちゃんとやっている人からすると少ない量ですが、当時の私はこれを修めるので限界でした。全く分からない外国の言葉を扱っているような気持ちで始めたその勉強で、入試までには、なんとなくですが概ね解答が作れるというところまでいきました。それが功を奏したのでしょうか、入試当日に奇跡が起こりました。それは「入試問題が問題集に載っていた問題と全て同じ」だったのです。
もちろん全く一緒だったわけではなかったと思います。しかし、入試が始まって問題を見たときに、「あ、これは問題集でやったものと同じだ!」という感覚がどんどん出てきて、全ての問題を完答することができました。帰りに校門で売っていた解答速報を買って見てみたら、数学は満点でした。
私の指導の原点はここにあると思っています。別に生徒たちに問題集を丸暗記させようというのではないですが(でも一方で、丸暗記するような徹底的にやり込む子が出てくれることも期待してます。)、暗記してしまうくらい脳に刻み込むと、初めて見た問題でも自分の脳の中で関連付けた知識が働いて「既視感」が生まれます。そうなるとテストで点を取るのはそれほど難しいことではないと思っています。また、そこに至るには「頭の良さ」や「才能」といったものも必要ないと思っています。結局はただのトレーニングです。今の入試問題は「思考力を試す」問題が多くなってきていますが、それもまた、基礎的な知識を土台としています。まず知識ありきで、その運用はその先にあるものなのだと思います。
また、私の大学受験において、扱う問題の数を広げないことも、たまたまですが功を奏したと思っています。1冊を完璧に仕上げるほうが、2~3冊を1周するよりもずっと身に付きます。同じ科目の問題集を横断して眺めてみると、結局載っている問題は重複しています。だったらその問題を完璧にモノにしたら、他の問題集の同じ問題を解く必要はありません。何冊も同時並行で行うよりも、1冊ずつその子の学習段階や状況に応じて、用途に合った問題集を選んでいくことのほうが大切です。
昨日、中学2年生が初めての北辰テストを受験しました。ここで自分の立ち位置を確認して、受験勉強に入っていきます。私は自分の経験・失敗をもとに生徒たちを指導し、よりよい方向に導きたいと思っています。私のようにくだらないプライドで、分からないくせに背伸びした問題集を砂を噛むような思いでやる必要はありません。今ならもう少し良い提案ができると思うので、来年度の受験生たちは一緒に頑張っていきましょう!