明日からいよいよ埼玉県の私立高校入試が始まります。
自習に来ていた受験生たちには、今日は早目に帰宅して明日に備えましょうということを伝えました。早めに帰って明日会場に行くまでのイメージを具体的にすること、持ち物であると良いものなどの話をしておきました。
私立高校入試に対し、「どうせ私立高校入試でしょ?そんなもん確約取ってるんだから別にそこまで頑張らなくても大丈夫じゃない」という態度の人も過去にはいました。最近では、学校の先生も「私立高校は受かるから大丈夫」という言葉がけをする場合があるようです。
埼玉県の私立高校では今では「確約」という言葉は使わないようにとされていますが、それでも保護者面談などで、それを言い換えたものがまかり通っているのは確かです。運営のために生徒を集めたい学校側と、その学校に入る資格が欲しい側の家庭の利害関係の上に成り立つしくみですが、その是非はおいておくとして。ですが、だからと言って「君は私立高校に行くんだから勉強は適当でもいいんだよ」というのはどうなのかなと思います。その学校に「受かる」から「大丈夫」というのはどういう理屈なのか、私には理解できません。
「受かるんだからもう頑張らなくていい」という言葉はとても残酷なように思えます。その言葉をかけることで、その子の努力するチャンスを奪うことにつながるのではないか。そうして努力を忘れ、今の力で進める道だけを進んでいった子は、やがてその先で「ずっと努力してきた」人と比べられることになります。それは受験の場なのか、社会に出てからなのかは分かりません。でもいずれ必ず出会い、比べられます。受験はそれ自体がゴールなのではなく、「受験がゴールではない」ということを学ぶのがゴールだと思うのです。
私は過去に、「私立単願だしもういいや」とこっちが悲しくなるくらいにモチベーションを下げた生徒を見たことがあります。もちろん全員ではないですが、そういう子のその後の境遇を知って更に悲しい思いになったことも何度もあります。その子の選んだ道だから自業自得だとバッサリ切り捨てることもできるかも知れませんが、本当にその子の願った道なのか、その道に進んでしまったのは、受験の時に甘い言葉を掛けられたからではないのか。そういうことを考えると身を切るような思いにかられます。私立単願が受験をスキップする仕組みになりつつある状況で、その仕組みを理解してしまう生徒がでてくるのは止めようもありません。ですが、それと勉強することの目的は別であるということは言い続けたいと思っています。
さて、冒頭で受験生達にしたアドバイスですが、本気の勝負をしてきて欲しいという思いで伝えました。今年は、私立単願の生徒たちも最後まで本当に一生懸命やってくれていたと思います。だから、そんな生徒たちにとって、この受験が本気の勝負となり、今後の糧となって欲しい。そんな思いで送りだしました。頑張って行ってらっしゃい。