「勉強をしなさい」という言葉掛けが子供の学力を低下させるというシミュレーションをしてみたいと思います。
どう逆立ちしても勉強しているように見えない子供が家にいるとします。いつ見てもゴロゴロしながらスマホをいじっているだけで鉛筆を持っている姿を家で見たことがありません。そこでその子の将来が心配になって言います。「勉強しなさい。」
子供の反応は様々でしょうが、普段からの関係性やその時の働きかけの強度によって、「それでもやらない」か「しぶしぶやる」のどちらかになると思います。
ここで、「それでもやらない」場合はまだ大丈夫だと思います。本人がやる気になり、自らやるようになれば学力は伸びるはずですから。反対に「しぶしぶやる」場合は注意が必要です。
嫌々やることで能力が向上することはまずありませんし、言われてやるのは「これ以上うるさく言われたくないから」です。つまり、小言を言わせないためにポーズとして勉強をしたふりをするようになります。すると、これ以上は子供に勉強をさせる働きかけはできなくなってしまいます。勉強はしているわけですから。
しかし、その勉強には中身がない。自分の能力を向上させるという効果は得られません。嫌々やっているので、学力向上に必要な負荷を自分にかけることはありません。こうして「『勉強して』も成績が上がらない子」ができていきます。
これのまずいところは、習慣化してしまうことです。いざ結果が求められるときに、本人も一生懸命やっているつもりでも効果は出ません。それまでに習慣化してしまったらもう、『楽』な勉強から自力で抜け出すことはとても難しいからです。どこが悪いのかを自分で発見するのは難しく、また分かっていても楽な方法は手放したくないので認めたくないという気持ちが働きます。今までそのやりかたで「上手くいっていた」からです。こうしてわが子供が心配で心配で、つい掛けてしまった「勉強しなさい」によって、子供は言いつけ通り効果の出ない『勉強』をするようになります。親も子も、誰も悪くありません。でも、状況は悪くなるばかりです。
自分で書いていて怖くなってしまいました。でも塾をやっていて、こういう子はかなりいます。真面目な子に多いです。