以前から音読は良い効果をたくさん得られると書き続けていますが、塾の指導として音読をさせることで、生徒の成績に実際に効果が出たことについて書きます。
定期テストの点数が上がった
社会の教科書を音読をさせることで、目に見えて定期テストの点数が伸びました。今回行われた富士中の中間テストで、中3社会の校内平均点が77点、塾生の平均点が86点で学校平均プラス9ポイントでした。これは、他科目よりも良い結果でした。
理由を考えてみる
今回音読を課題に出したのは1ヵ月間ほどです。実はそれほど長期間にわたっての音読というものではありません。あくまで私の経験に基づく感覚ですが、毎日実施したとして音読本来の効果が表れるまでに2ヵ月くらいはかかる気がします。
ではなぜこの短期間の作業で生徒たちの多くが社会で過去最高の点を取れたのでしょうか。
これは少し情けない話ですが、塾生たちが「今まで教科書を読み込んでこなかった」というのがあるのではないかと思います。中間テストが実施されたときにも書きましたが、社会のテスト問題では、教科書を読んでおかねば答えられない問題がありました。これを音読の課題により教科書を「読み込んだ」ことで乗り越えられたことが大きいと思います。
読解力向上のためにやったことが定期テストの勉強としてハマった
もちろん私は塾を立ち上げてからずっと、生徒に対し「教科書をしっかり読みなさい」とは言ってきました。ただ、それでは不十分だったのです。
しかし、生徒が指示を聞かずに教科書を読んでいなかったわけではありません。塾生は真面目な子が多いので、教科書を読みなさいと言われればちゃんと読みます。でも、読み「込む」というところまでは到達していなかったというのが実際のところなんじゃないかと思います。
今回のテスト前に行った音読の課題は、「教科書の指定されたページを『間違えずに読む』か『制限時間内に読む』」というものです。間違えずに読むのも制限時間内に読むのも、準備しなくては合格に達することができない基準を設けています。
実はこの課題は「生徒たちの読解力を少しでも伸ばせたらいいな~」と始めたことで、定期テストの対策として行ったことではありませんでした。今年の受験生は国語の平均偏差値が5科目の中で最も低いので、その対策として始めたことです。ですから、音読の本来の効能を期待してやったことがたまたま中間テストにハマりました。狙ってできたことでは全くなく、棚からぼたもちです。
もくせい塾の音読課題は準備する段階で、つっかえずに読めなくて合格できません。その為には内容を「理解」し、次に読む内容が頭に浮かんでいる状態を作るために、あわよくば文章を「半分くらいは暗記」しなくてはならない。こうすることで音読は速く正確になってゆきます。生徒たちは何度も不合格をくらいながら合格ラインを超えるために頑張り、結果オーライなところはありましたが、この感覚を「読み込む」というのだと実感できたのだと思います。
手を添えるべきものと、手を離すべきもの
この体験から、音読には「聴く人」が必要だということも分かりました。
もくせい塾は「自立学習」を謳っているので、できるだけ手を貸さないようにしています。しかし、やり方が分からない状態で「さあやれ」では生徒は困ってしまいます。ですから手を掛けるところはとことん付き合い、自分で進めるようになったら手を離します。
そして、音読でも「読み込む」レベルにまで引き上げるには、披露する場があってそれに向けて努力するという環境が必要だと分りました。つまり音読は手を掛ければ高い効果が得られるということです。それこそ、子供が小さいときに親が行う「読み聞かせ」と同じくらいのイメージで「読み聞かせられ」をするべきだと学びました。
音読は一人でもできるもの。しかしそれでは自分基準になってしまうので、読み込むレベルに一人で持ち上げられるまでは徹底して聴く。これを塾の指導に取り入れていきます。今回は期間が短かったですが、これが受験まで続いたとき、音読の真の効能が生徒全員に降りかかっていることと思います。