文章問題は、書かれていることを正確に読み取る力が求められます。
文章から推測できること
高校生向けの現代文のある問題集の問題の1文目が、こう始まっています。
「教師になってまだ三年目という真司の担任教師は、「[A]」という言葉を「いたずら」と言い換えた。(「ナイフ」重松清著)
ここまで読んで、この場合の[A]に入るのは「いじめ」だと、勘の良い人なら気付きます。これは、いじめ問題が取り上げられるときに、加害者側の意見として「いたずらが行き過ぎた」というような言葉を聞いたことがあれば容易に想像できます。「いじり」とか。
もちろん本文ではこの後にいじめと言う言葉も出てくるので、少し読み進めると分かるのですが、ここまでで予想が立てられることが「読解力がある」ということです。
さらに読み取れることは
他にもこの文章からはいくつか読み取れると思います。
「真司の」
→「親の視点で書かれている」こと
→子供の名前が「真司」であること
→「教師と親が話している場面である」こと
「教師になって『まだ』三年目」
→親は子供の担任に対してマイナスのイメージ(「未熟である」等)を感じていること
等々。そして上で読み取ったことと、[A]に入る言葉が「いじめ」であると推測すると、【「いじめ」を「いたずら」と言い換えた。】ということから、親が担任の教師に対して不信感を抱いていることも読み取れます。
己の保身の為、もしくは面倒ごとに巻き込まれたくないという思いの為に「いじめは起きていない」と言ったのではないか、と。
さすがプロの小説家の作品は情報量が多いですね。そしてそれを受け取れるかが、小説の読解力になります。文章を単語レベルで拾いながら読み込み、自分の経験値を総動員して内容を理解する、生徒にはそんな能力を伸ばしてもらいたいと思っています。