受験が終わった組

以前から、「なぜ近隣の高校では推薦入試で大学進学を決めた生徒も大学入試共通テストを受けさせるのだろう」と思っていた。もちろん推薦入試の結果が出る前に出願期間があるので必然的に申し込んではいるのだけれど。

そういう人もいる


受験が終わった生徒も「受けなさい」と言われているのはなんだか不思議だった。出願料を払って受けないのは勿体ない。高校最後の実力テストとしての位置付け。なんていくつか考えられるが、実情はこうじゃないかな。「受けることで勉強へのモチベーションを維持する」

 

学校は3月まで卒業できない。直前まで受験勉強を頑張っている生徒もいる。でも一方で受験が終わった生徒もいて、その温度差に教室運営は非常に難しくなるだろう。そこで「共通テストまでは頑張れ」というお題目があれば多少は(ほんとに多少だと思う)まとまりが得やすくなる。高校は高等教育の場だから、勉強から「ご卒業」しちゃった生徒に合わせるわけにはいかない。そう考えると高校の先生方もご苦労なさっていると思う。今は感染症のゴタゴタもあって手放しでは言いにくくなってきているが、そのための「受けなさい」だったら合点もいく。実際に推薦入試の大学入学者は一般入試のそれと比べて学業で付いていけなく退学率が高い傾向にある。そこまで考えて勉強を続けなさいと言っているのだとしたら良心的でもある。

 

この宝刀が使えないのが「埼玉県の高校入試」だ。無くなったとはいえ、今でも私立入試における確約「のようなもの」は残り続けている。私立単願入試ならば、推薦をもらった段階で「終わり」と捉える親子も少なくないと思う。私立高校の合格発表日からはモチベーションがダダ下がりの生徒と公立受験を控える生徒との意識の溝は、まるでマリアナ海溝のようになる。こんなもの3学期の期末テストなんかじゃ防ぎきれない。

 

過去もくせい塾に在籍した私立単願組には2通りいた。「終わったからさっさと塾辞めよう」派と「終わったけど最後まで頑張ろう」派だ。後者の子が出てきてくれるのは大変嬉しい限りだが、残念ながら前者もいた。そういう子たちのその後を思うと暗澹たる気持ちにもなったが、そこまでは「お呼びでない」のだと思い、笑顔でお見送りしている。自分が何かを成し遂げたとばかりに、「もう塾辞めてもいいですか」と言ってくる生徒の顔を見ると、中学校の先生方はそれでも3月まで付き合わなきゃいけないのだなあと大変さをお察しする。せめて、早期ご卒業組が勉強まで早期ご卒業になっていないことを祈るばかりだ。