タクシーの話

久々にタクシーに乗った。

タクシーで感じる時代の流れ


普段の移動は自転を使っているので、タクシーに乗ることは2年に1回も無い。だけど先日タクシーを連続して使う機会があった。

 

久々に利用してみてとてもビックリした。乗り込む際に、運転手さんに「ご利用ありがとうございます」と言われたのだ。こんなの私が過去に乗ったタクシーでは無かった。そして行き先を告げると、「〇〇を通る道順でよろしいですか」と、走るルートも確認してくれる。最後に降りる時に「ご利用ありがとうございました」とまで言われた。申し訳ないが、これは私の知っているタクシーじゃない。

 

私の最後のタクシーの記憶は、「シートベルトをお締めください」という自動音声に対して「シートベルトしたほうがいいですか」と質問したら、「勝手にすれば」と返されたことだ。そのエンターテインメント性と比べると全く別のサービスを利用しているような気持ちになった。世相を受けて、会社単位での改革が行われたのだろう。これって東京オリンピックを機に変わったのかな。私も見事に「お・も・て・な・し」されてしまった。

 

でもこうなると、よくある芸人さんの「タクシーでひどい目に遭った話」みたいなのは無くなっていくのだろうなと思う。そういう話は聞く分には結構好きなので、なんとも言えない気持ちになる。接客サービスとしては正しい流れなんだろうけれど、ね。

 

タクシーと言えば、中学生たちの修学旅行ではタクシーで京都の寺社を回ったと聞いてそれもビックリしたのだった。タクシーは「高額な移動手段」とういう感覚なので驚いたのだが、他の公共機関でのトラブルとかを避ける為かな。私がやった、バスの時刻表とにらめっこして工程表を作るみたいなのはもう無いのね。回る回るよ時代は回る。

 

最後にもうひとつ。昔タイを旅行していたときに乗ったタクシーの話。今はもう違うのかも知れないが、当時のタイの交通事情は混沌としていた。道路の車線なんてあってないようなもので、信号が赤になると次の青では我さきに出ようと、停止線に車が殺到する。その隙間を2人乗りのスクーターや客を乗せたトゥクトゥクがすり抜けていく。そんな、排気ガスとクラクションの音にムワっと包まれた道を、私の乗ったタクシーは進んでいた。

 

ふいに「ガリッ」という音が聞こえた。接触事故だ。私の乗っているタクシーが別の乗用車に当てられたのだ。それまで私が日本人と知るや、「ヒターチ、アジノーモトー」と陽気に話していた運転手のおじさんの顔つきがサッと変わった。おじさんはすぐに大音量で流していたタイのポップ歌謡を消し、「このへんで降りろ」と私を追い出すように降ろした。そして、私と同時に車を出たおじさんは、ぶつかってきた車に向かって猛然とダッシュして行った。彼の顔は、完全にムエタイボクサーのそれに変わっていた。それを見た私は、「この国の経済発展は間違いない」と確信したのだった。

 

今日もエアコンが止まって教室が冷えてきたので帰ります。おやすみなさい。