せっかくだから伸びてから悩もう

嬉しいけどね。

学力が伸びたら伸びたで悩むのよ


受験指導で難しいなと感じることのひとつに、「高校受験生の学力が伸びた時」というものがある。

 

偏差値が伸びると、「より上の学校へ」という動きが起こる。今まで志望校としていた学校よりも1ランク、2ランクくらい上の学校を志望するようになる。そうすると今度は「今までの成績」というものが足かせになる。公立高校入試では学校の通知表も入試資料になり、中学・大学入試の試験一発勝負では無い。それゆえ今までに確定してしまった成績が足を引っ張ることになる。

 

学校の成績と偏差値で決めていた「妥当な」志望校を、受験生になり偏差値が伸びると「偏差値」で上げていく。しかし確定している成績のほうは変わっていないので、偏差値でみた新たな志望校の「受験時の総合成績(通知表+当日点)」には届いていなかったりする。塾講師の「当日の点数勝負ですね」とは、「現状は届いていませんよ」を意味する言葉なのだ。

 

また偏差値が上がって「受験プラン」が大きく変わることもある。埼玉県立高校入試の場合は偏差値上位校に学校選択問題が採用されており、共通問題採用校からそういった学校へ志望の鞍替えが起こったり、または(今は全部無いことになっているけれど)確約制度の無い私立難関校を受験することになったりする。これは早ければ早い程対応もできようが、逆に遅くなるとどんどん厳しくなる。

 

偏差値が50台から60代後半、70くらいまで伸びるとまさにこの現象が起こる。もくせい塾には無いが、学力によるクラス分けのある塾でも50台半ばの子は「標準クラス」だ。共通問題採用の中堅公立もしくは確約制度のある(今は全部無いことになっているけれど)私立高校の上位コースを狙う。しかしその層を飛び越えて伸びてしまうと受験のプランが変わり、「それ専用の」対策が必要になったりするのだ。そうなった場合、生徒の能力にもよるが最低でも半年くらいは時間を見ておきたい。

 

しかし学力を伸ばすのが塾の使命なのに、それが叶うと今度は志望校合格が険しくなっていくとはなんとも皮肉な話だ。生徒の力が伸びるのは嬉しいことなんだけれど、どの学力層にも悩みはある。だからそんな悩みを実力で吹き飛ばせるように学力を「突き抜けて」伸ばさなくてはならない。塾にはそんなことを期待されていると思う。でも願わくば「少しでも早目に来て」ってちょっと思っている。