バトンを渡す。
公式を授けるときは緊張する
少し時間が余ったので、授業で生徒に数学の便利公式を教えた。中1図形分野で習う、おうぎ形や空間図形で使えるものだ。その説明の後、生徒の子に
「どう?感動した?」
と聞いたら
「うん」
と言ってくれた。私の手柄でもなんでもないのだが、そう言ってもらえるのは嬉しい。
公式を教えるときにはできるだけそれを導いて見せるようにしている。それは、公式の成り立ちを知ることでより深い理解が得られるからだ。
ただ単に「これを使えば便利に答えが出るよ」という薄い説明だと浅い理解に留まり、すぐに記憶から抜けてしまう。高い値段のものを一生懸命働いたお金で買ったときは大切に扱うけれど、安く簡単に手に入ったものはつい雑に扱ってしまいがちだ。それと同じで楽に手に入ったものはすぐに失ってしまう。
かつてその公式を導き出した人の辿った道を追体験することは学習の醍醐味だと思う。だから公式を教えるときは普段以上に手間をかける。時にはまず、何も知らない状態で苦労しながら問題を解いてみて、その後公式で解いてもらうこともある。その時に知った「便利!」という感動は生徒に残りやすい。後生の人々もそうやって感動していることを知れば、それらを生み出した先導者もさぞニッコリしているだろう。