塾が生徒を骨抜きにしちゃダメだよね

 

長いこと塾講師をやっていると、「先生が隣についてあげないと課題を進められない子」に出会うこともあった。今はいない。そういう子は来てもすぐに辞めちゃうからね。

 

塾の指導で学校の課題をやらせないといけないレベルの子。テスト期間でも提出物を自分で進めようともしない。そのせいで成績が下がるので仕方なく塾で手伝ってあげるため、「ワークを持っておいで」と伝えるのだが持って来ない。挙句の果てには悪びれもせずに「無くした」と言い放つ。当事者意識の希薄な生徒。

 

こういう生徒は課題をやらせようとしても自分で手を動かそうとしない。自習であっても講師が隣に座って見てあげていないといけない。昔働いていた塾ではこういう光景をかなり見た。塾講師のアルバイトをやりたいという大学生の多くはそれなりに高い志を持って職場の門を叩いてくれるものだが、やりたかったことはこんなことではなかっただろうにと申し訳なく思う。

 

ところでこういう生徒は、なぜ課題を自分で進められないのだろうか。その原因のひとつは、塾にもあると思っている。それは「課題を『手伝ってあげてしまう』から」ではないだろうか。

 

教えてもらったほうが自分で進めるよりも何倍も速いし完成のクオリティも高まる。そして何より「ラク」だ。一度それを知ってしまったら、次から自分で完成まで進めてみようなんて思わないだろう。自習中に隣で見ている講師だって、何も手を出さないでいるほと我慢強くはない。つい教えてしまう。それが生徒の自分でやらないに拍車をかけているのではないだろうか。

 

こう思うようになったのは、ウチにいるある生徒を見てからだ。その子の成績はそれほど高くない。自力でできない問題も多い。かつての自分で課題を進められない子たちとそれほど変わらない。でも、ここまで定期テスト前の課題は自力でやっている。先日も、

 

「もうワークとか進めちゃってもいいですか」

 

と質問に来た。提出物を自分で仕上げられるか否かは、学力ではないのだ。「自分の足で歩ける」力は環境次第で身に付くこともあれば、身に付かないこともある。どっちのほうが将来性が高いかは言うまでもないよね。