塾が防波堤になるべき案件

今の弊塾にはいないが「指導に口を出して来る系」の保護者がいる。偏見だが、そういうご家庭の生徒の成績はほとんど上がらない。なぜなら親に忍耐力がないからだ。

 

我が子にはあれをやらせて下さい。やったらテストをしてチェックしてください…

 

昔働いていた職場では「じゃあ自分でやりなはれ」と言いたくなるほど指導の指示をされる保護者の方もいた。きっと子供が「言うことを聞かない」状態になっていてフラストレーションを溜めていたのだろう。だから塾の先生を通じて自分の言うことを聞かせたかったのだと思う。

 

しかしこれは悪手だ。まず子供が親の「言うことを聞かない」のは、すでにガミガミ言われ続けて耳を塞いでしまっている状態だからだ。それを直さずに別の人を通じて言うことを聞かせようとしたって何も変わらない。

 

結局そういうご家庭は、生徒指導をはじめても成績に変化が見られる前にしびれをきらして退塾してしまう。生徒が話を聞かない状態に凝り固まってしまっていると、それを解きほぐす作業から入らねばならずそれなりに時間がかかる。自分で結び目をぎゅっとしてしまったのに、それをほどくのを手伝っている人に「早くして。ねえなんですぐできないの?早くしてってば」って言っているのだ。

 

子供は自分とは別の人格だ。それに対し要求を即時に通しその通りに動かすことなどできない。そこで我慢できないと「ガミガミ」が出てくる。なんとかしたいと思う親御さんの気持ちは汲みたいが、塾に入れても親がその姿勢のままだと変えることはできない。矛先は塾へと向き、指導に対してもあれこれ口を出したくなっちゃうのだろう。結局子供をできなくさせているのはその親自身なのだ。

 

指導に注文を出されていたはじめの頃、私は全部引き受けようとし、できる限り言われたままやろうとしていた。言われた通り生徒の学力に合っていない教材を使い、言われた通り時間的・能力的にできないテストを課し、言われた通りできるまで自習に残ることを強制しその日の業務終了まで座席に座らせ続けた。それがサービスだと思っていた。それで結局生徒を苦しめてしまっていたのに。もっと早く気付いて、今の姿勢で親と対峙すべきだった。私が強制すべきは生徒ではなく親だったと今なら言える。

 

その時の子供の「また辛いことをさせるの?」と言いたげな暗い表情は忘れられない。